2025年のDebian sidで印象に残った不具合11選

去年の記事は2024年にDebian sidで踏んだ不具合8選です。

個人的に印象に残ったDebian sidで踏んだ不具合をピックアップしてみました。

Debian sidそのものの不具合だけでなく、upstreamの問題がパッケージ化されて広く使われるようになったことで踏みぬいたというケースも含んでいます。

#1089513 - nvidia-driver: crash in drm_open_helper on Linux 6.12.3 - Debian Bug report logs

正確には2024年から継続していた不具合です。 Debianのリポジトリからインストールできるnvidiaのドライバー (535.216.03-1)がkernel 6.12に対応していない不具合でした。 nvidiaのパッケージを更新しない場合、解像度が適切に設定できなかったりとはまるので、6.12にあげられない状態が続いていました。

linux-image-amd64をインストールしていると、既定で6.12で起動してしまうので、GRUBの設定で 回避するStick to boot from 6.11 linux-image - ひとりしずかに。という記事を書きました。

nvidia-driver 535.216.03-2が2月にリリースされて問題は解消しました。

#1092081 - virtualbox ftbfs with Python 3.13 as the default - Debian Bug report logs

Virtualboxがconfigureでpython 3.12までしかサポートしないようになっていたため、 Debian sidがpython3.13にあがったのに、VirtualboxPython 3.12に依存し続けて追従できないという不具合でした。

この不具合によりPython 3.13をサポートした他のパッケージの更新がブロックされてしまうということが続いていました。 (ちょうどtrixie向けにせっせと皆がパッケージを更新しはじめていた時期だったので、手元で更新できないパッケージがたまっていった。)

Virtualbox 7.0.20-dfsg-1.2が2月にリリースされて不具合が解消しました。

Breaking compatibility, upgrade from createrepo-c 0.17.3 to 1.2.0

これは不具合というか、パッケージの更新にともなう非互換を踏んでしまった例。 createrepo-cが 0.17.3から1.2.0にDebian unstableで更新されたのだけれども、 生成されるリポジトリメタデータのフォーマットが変わってしまっていました。

従来はgz圧縮されていたのが、zstで圧縮されるのがデフォルトに変わった影響をうける問題でした。

これにより、何も考えずに新しいバージョンのcreaterepo-cでリポジトリメタデータを更新してしまうと、 リポジトリを参照している環境でyum経由で更新が一切できなくなります。

例えば、Amazon Linux 2なんかが新しいメタデータのフォーマットを扱えないので詰みます。 とはいえ、AlmaLinux 8,9とかAmazon Linux 2023なんかは問題ないので、影響は限定的です。

ソフトウェアの配布のためにリポジトリをメンテナンスしている人じゃないと気づかないし、 --compatibilityオプションを指定して旧フォーマットのメタデータを生成しなおせばよいのでひとまずはそれで回避できます。

Amazon Linux 2は2026年6月までサポートが延長されたので、--compatibilityオプションがcreaterepo-cから削除されたら 別途対応を考えないといけないやつです。

#1099191 - debian-installer: scanning the mirror stalls frequently - Debian Bug report logs

Debian installerでVMにDebianをインストールしようとするとミラーの選択が異様に遅い問題を踏みました。

よくよく調べてみると、Virtualboxでブリッジネットワークを有効にしてインストールしようとすると、 IPv6で疎通できないため、タイムアウトしまくるという状況になっていました。

インストーラー内部で実行しているwgetはなんもオプションを指定しないと900秒のタイムアウト待ちとなり 時間かかり過ぎてなんも処理がすすんでないように見えるというものでした。

どうやらVirtualboxWiFiのアダプタをブリッジ接続にしてゲストにDebianをインストールするような場合にはまる問題だそうです。 ブリッジ接続ではなくNATだと問題を踏みません。 あるいは、グローバルアドレスにpingを打つと疎通できるようになるというハックが知られています。

#1100078 - budie-desktop: something weird happen, it causes login failure - Debian Bug report logs

Budgie Desktop環境を利用しているのですが、gnome-shellなどの大量更新があったあたりからデスクトップ環境に ログインするとウィンドウマネージャがクラッシュするようになりました。

ディスプレイマネージャがgdm3とlightdmのどちらでも発生し、GNOME (クラシック)では問題が発生しないことから Waylandがらみなんじゃないかなーと疑っていますがよくわかりません。

budgie-desktop 10.9.2-8で修正されました。

#1100486 - grub-efi-amd64: Fails to start after upgrade. - Debian Bug report logs

これは、grub2を不用意に更新すると起動しなくなって困るという不具合。 2.12-6に更新したか定かでない状態でバグ報告を目にして、ドキドキしながら翌日起動した記憶があります。

幸い、該当バージョンではあるものの特に支障なく起動できたので、問答無用で誰でも 起動しなくなるのではなく、特定条件を満たすと起動できなくなるパターンの不具合のようでした。

budgie-desktopでログイン後にWindowsキーが効かない

これは、以前も遭遇したことがあったんだけど、再発した系の不具合。 ログインは成功し、デスクトップ環境が表示されるものの、反応するのはマウスカーソルのみで Windowsキーが効かないのでメニューの操作等が一切できない。 マウスカーソルが動くものの、クリックしても何も反応しなくて詰む。

sshできるようにしてあれば、ssh経由でログインして、budgie-wmプロセスを殺すと復活する。 以前はたまに発動していたがいつのまにか再現しなくなり、trixieリリース後あたりから再現頻度があがった。 budgie-desktop 10.9.2-9 でクラッシュする不具合が修正されたがそれは関係なかったようだ。

  • lightdm: 1.32.0-6+b2
  • bugdie-desktop: 10.9.2-9

この不具合はいまだに再現するので非常に困っている。 ssh経由でどうにかするのは面倒くさいので、NFCタグを用意して、スマホで特定のURLにアクセスしたらbudgie-wmを殺す しくみを整えて回避している。

VirtualBoxを更新したらVMを起動できなくなった

VirtualBoxを更新したら、更新時にサービスの起動に失敗する不具合を踏みました。

Signing module /var/lib/dkms/virtualbox/7.2.0/build/vboxdrv/vboxdrv.ko
Signing module /var/lib/dkms/virtualbox/7.2.0/build/vboxnetadp/vboxnetadp.ko
Signing module /var/lib/dkms/virtualbox/7.2.0/build/vboxnetflt/vboxnetflt.ko
Installing /lib/modules/6.16.5+deb14-amd64/updates/dkms/vboxdrv.ko.xz
Installing /lib/modules/6.16.5+deb14-amd64/updates/dkms/vboxnetadp.ko.xz
Installing /lib/modules/6.16.5+deb14-amd64/updates/dkms/vboxnetflt.ko.xz
Running depmod... done.
Job for virtualbox.service failed because the control process exited with error code.
See "systemctl status virtualbox.service" and "journalctl -xeu virtualbox.service" for details.
invoke-rc.d: initscript virtualbox, action "restart" failed.
× virtualbox.service - LSB: VirtualBox Linux kernel module
     Loaded: loaded (/etc/init.d/virtualbox; generated)
     Active: failed (Result: exit-code) since Wed 2025-09-10 20:54:22 JST; 5ms ago
 Invocation: b153e4f553604ff79e33162276ac4b42
       Docs: man:systemd-sysv-generator(8)
    Process: 82724 ExecStart=/etc/init.d/virtualbox start (code=exited, status=1/FAILURE)
   Mem peak: 3.9M
        CPU: 29ms

 9月 10 20:54:22 jet systemd[1]: Starting virtualbox.service - LSB: VirtualBox Linux kernel module...
 9月 10 20:54:22 jet virtualbox[82724]: Loading VirtualBox kernel modules...modprobe vboxdrv failed. Please use 'dmesg' to find out why ... 
failed!
 9月 10 20:54:22 jet virtualbox[82724]:  failed!
 9月 10 20:54:22 jet systemd[1]: virtualbox.service: Control process exited, code=exited, status=1/FAILURE
 9月 10 20:54:22 jet systemd[1]: virtualbox.service: Failed with result 'exit-code'.
 9月 10 20:54:22 jet systemd[1]: Failed to start virtualbox.service - LSB: VirtualBox Linux kernel module.
virtualbox (7.2.0-dfsg-3) を設定しています ...
Job for virtualbox.service failed because the control process exited with error code.
See "systemctl status virtualbox.service" and "journalctl -xeu virtualbox.service" for details.
invoke-rc.d: initscript virtualbox, action "restart" failed.
× virtualbox.service - LSB: VirtualBox Linux kernel module
     Loaded: loaded (/etc/init.d/virtualbox; generated)
     Active: failed (Result: exit-code) since Wed 2025-09-10 20:54:23 JST; 3ms ago
 Invocation: 17acc65dfe6d4cbc862f80f7e80ecd30
       Docs: man:systemd-sysv-generator(8)
    Process: 83203 ExecStart=/etc/init.d/virtualbox start (code=exited, status=1/FAILURE)
   Mem peak: 3.1M
        CPU: 28ms

 9月 10 20:54:23 jet systemd[1]: Starting virtualbox.service - LSB: VirtualBox Linux kernel module...
 9月 10 20:54:23 jet virtualbox[83203]: Loading VirtualBox kernel modules...modprobe vboxdrv failed. Please use 'dmesg' to find out why ... 
failed!
 9月 10 20:54:23 jet virtualbox[83203]:  failed!
 9月 10 20:54:23 jet systemd[1]: virtualbox.service: Control process exited, code=exited, status=1/FAILURE
 9月 10 20:54:23 jet systemd[1]: virtualbox.service: Failed with result 'exit-code'.
 9月 10 20:54:23 jet systemd[1]: Failed to start virtualbox.service - LSB: VirtualBox Linux kernel module.
virtualbox-qt (7.2.0-dfsg-3) を設定しています ...

既存のVMを起動しようとしても、失敗するようになってしまう状態でした。 エラーダイアログをみると、vboxdrvが読み込めていないという症状である。

$ sudo modprobe vboxdrv
modprobe: ERROR: could not insert 'vboxdrv': Key was rejected by service

端末でmodprobeしても確かに該当モジュールを読み込めない。 dkms statusをみてもビルド時にきちんと署名していそうなログが出ている状態でした。

ここでうっかりしていたのですが、マザーボードを交換していたため、SecureBootが有効になっているものの dkmsの鍵がMOK Managerを経由して登録されていない状態になっていた様子。 sudo mokutil --import /var/lib/dkms/mok.pubして再起動時にMOK Managerでenrollしておくことでカーネルモジュールが読み込まれるようになり、 既存のVMも正常に起動できるようになりました。

#1115194 - libllvm19: should be multi-arch, get removed by merge #168 - Debian Bug report logs

clang-19に更新すると、i386なパッケージがごっそり削除されるという問題。 たとえば、amd64i386のパッケージを動かしたい人にとっては致命的な不具合。 古いプリンタドライバーとか、steamなんかを動かしたい場合に影響を受ける。

別のバグレポートにより、Multi-Arch対応をやめてしまったのが根本的な原因。 clang-19 (1:19.1.7-7) にて問題は修正されました。

podmanのコンテナで疎通に時間がかかる

podmanのどのバージョンからかは不明だが、コンテナからの疎通にとても時間がかかるようになった。

  • debianのコンテナでdeb.debian.orgへの疎通が遅い。
  • ubuntuのコンテナ(focal,jammy,noble)では問題が発生していない。
  • rockylinux:8,9,10のコンテナもyumの取得が遅い。
  • almalinux:8,9,10のコンテナは問題なし。
  • fluentd.cdn.cncf.ioからアーカイブを取得しようとすると失敗する。

原因としては、podmanのデフォルトネットワークがIPv4しかサポートしていないのに コンテナでIPv6を優先して通信を試みる状況だと発生するようだった。

たとえば、podman network create dual --ipv6みたいにしてIPv4IPv6双方をサポートするネットワークを作成して、 そのネットワークをpodman run --rm -it --net dual などとしてデフォルトネットワークではないものを利用すると解決する。

デフォルトネットワークが両方対応しているもので作成してくれるのが一番楽なのだけれど、 IPv4のみとなっていて、デフォルトネットワークpodmanは削除できない。 ホストの状況次第だが、コンテナで/etc/gai.confでIPv4を優先するようにすれば疎通の問題は解決する。

暫定的に疎通の問題を解決しても、コンテナからcloudflare R2にアクセスできなくなったりして非常に困ったので、 最終的には、--network slirp4netns:mtu=1400,enable_ipv6=falseをコンテナ起動時に指定することで回避している。

#1123845 - gstreamer1.0-plugins-bad: Unsatisfied dependencies - Debian Bug report logs

mjpeg関連でアップグレードに失敗するようになった不具合。 時期的にxmas休暇終わったらみるよということで、FTBFSなやつを放置すると痛い目に遭うという印象に残った不具合。

LANG=C sudo apt upgrade -V
You might want to run 'apt --fix-broken install' to correct these.
Unsatisfied dependencies:
 gstreamer1.0-plugins-bad : Depends: libmjpegutils-2.2-0 (>= 1:2.2.1) but it is not installed
                            Depends: libmpeg2encpp-2.2-0 (>= 1:2.2.1) but it is not installed
                            Depends: libmplex2-2.2-0 (>= 1:2.2.1) but it is not installed
Error: Unmet dependencies. Try 'apt --fix-broken install' with no packages (or specify a solution).

これで、gstreamer1.0-plugins-badを削除しようとすると、それなりにパッケージを削除しないといけなくなるので面倒くさい。

libges-1.0-0 rygel rygel-playbin rygel-localsearch rygel-tracker gstreamer1.0-plugins-bad libcheese8 libcheese-gtk25 cheese gnome-video-effects

パッケージが更新されたことにより、以下のようにapt --fix-broken installにて解決した。

 sudo apt --fix-broken install
依存関係を解決しています ... 完了                           
Installing dependencies:    
  libmjpegutils-2.2-0  libmpeg2encpp-2.2-0  libmplex2-2.2-0

REMOVING:
  libmjpegutils-2.1-0t64  libmpeg2encpp-2.1-0t64  libmplex2-2.1-0t64